日が暮れる前にジルたちは野宿の準備を始めた。


小高い崖の裾に迫り出した岩の陰。
近くには風除けになりそうな大木もある。


その傍らに荷物をまとめて置くと、ローグは慣れた手つきで簡単な釜戸をこしらえ、干し肉と野菜を炙りだした。


釜戸からパチパチと薪の爆ぜる音が聞こえる。


しばらくすると、ほんのりいい香りが辺りに漂い始めた。



ジルは釜戸に向かって腰掛けるカチュアの肩にブランケットを掛けてやった。


まだ初夏である。
日が暮れてからはひんやりした空気が辺りを包む。


やはり用意しておいてよかった。


「ありがとう」


ジルの気遣いにカチュアは素直に礼を言った。


そんなカチュアに対してジルも微笑んでみせる。


だが、すぐにカチュアは俯いて、自分の足元に視線を移した。


昼間の獣人の一件から徐々に落ち着きは見せているものの、口数は極めて少ない。


かなりのショックを受けているのだろう。