サダソは更に続けた。


「この村にお願いできそうな方は、あなた方以外におられない。
宿屋の主人もそう仰っていた」


どうやら宿屋のスコットがジルたちのことを話したらしい。


そもそも二人以外に旅人はこの村にいないのだから、二人が紹介されても不思議ではない。


「突然のお願いです。考えられるのも無理はないでしょう。
しかし、我々はあなた方に頼るしかないのですよ。もちろん、報酬は弾みます」


サダソの必死な懇願を目に、ジルはローグと顔を見合わせた。



姫の護衛を他人に任せてまで帰らなければならない急用。
その内容は分からないが、聞く立場に自分たちはいない。

そしてなんとも融通の利かない儀式の掟。


大体の事情は飲み込めたが、こんな自分たちで姫の護衛が務まるのだろうか。


どうする?
困ったようにジルは目配せでローグに問うた。


しかし、断る理由も特にあるわけではない。
断る事ができそうな状況でもないことは、二人とも頭のどこかで分かっていた…。


「分かりました。俺たちでよければ引き受けますよ」


短い溜め息の後、ローグはそう返事をした。


「本当ですか」


サダソの表情がパッと輝く。


隣のクリストファーは頭を深々と下げていた。


こうして二人は唐突にイスナ国王女の旅の護衛を引き受けることになったのである。