「村長さんでいらっしゃいますかな?」
老人は穏やかな口調でスコットに問うた。
集まっている群衆など気にしていないようだ。
「いんや。俺はこの村の宿屋のスコットってんだ。
つうか、何だよ、あんたら。いったい何もんだ?」
よそ者を警戒するようにスコットは少しばかり乱暴な口調で言う。
マズイ…。
そう思ったジルは咄嗟に行動に出ていた。
「スコットおじさん。待って」
スコットの傍らに駆け寄り、
「ジル?」と怪訝な表情を浮かべているスコットを無視して、二人に向かって恭しく跪いた。
「おいっ。ジル?」
スコットはもう一度ジルに声を掛けたが、スコットに説明するよりも先に優先しなければならない事がある。
「失礼ですが、イスナ国の姫様でいらっしゃいますね?」
ジルは目の前の人物に敬意を払い、丁寧な仕種で頭を下げて言った。
「何だって?!」
驚いたのはスコットとその周りにいた村人である。
まさか、この村を統治するイスナ国の人物が村に現れるとは俄かに信じ難い。
村人のざわつきも、先ほどより大きなものになった。

