視線を上げると、その騎士に手を引かれて馬車の中から人が降り立とうとしている。
その姿はひょろっとした体格に緑のローブを纏った老人だった。
シャープな顔の輪郭に白いものが混じった顎鬚を生やしている。
そのすぐ後に、手を引かれて女が身を現す。
男にエスコートされて降り立つ女は、長いサラサラの金髪に少し切れ長の瞳。
ぷっくりした唇が可愛らしい。
年の頃はまだ10代だろう。
が、妙に大人っぽい。
女の方も馬車に見劣りしないくらい豪華な衣服を身につけていた。
それ見たとき、ジルはハッとした。
何が目的なのか分からないが、この連中が何者なのかを思い出した。
「村長さんは、どちらにいらっしゃいますかな?」
老人が集まった村人に目を向けると、微笑んでそう発した。
村人たちは少し距離をおいて構えている。
誰も返事を返そうとしないその中で、
「おいおい。いったい何だってんだ?
騒々しい」
後方から声が聞こえ、群衆を掻き分けてきた者がいた。
宿屋の主人、スコットだ。
スコットは半ば面倒臭そうに頭をボリボリと掻きながら、老人の前に出た。
村人の騒ぎを聞きつけてやってきたのだろう。

