マイクの案内する方に向かうと、練習中だった子たちまで付いてきてしまった。
前方にはもう村人たちが集まってきている。
「あれだよ、あれ」
マイクがその方を指差して、ジルを見上げた。
村人の隙間から見えたもの、
それは………。
レンガ色をした大きな馬車。
前後左右にはありとあらゆる装飾が施されており、豪華にキラキラと輝いている。
取り付けられらランプにまで細やかな彫刻がなされていた。
馬車を引く馬は二頭で、サラサラの鬣を持った白馬だった。
今までにこんな派手な馬車を目にすることはあまりない。
単なるお金持ちの馬車というより、どこかの貴族が有するような、そんな馬車だ。
村人たちが驚いて集まってくるのも無理はない。
静かなリィズ村に突如として現れたその馬車は、どこから見ても異様な光景だった。
「な。すげぇだろ」
マイクが再度興奮を高め、鼻息を荒くして話しかけてきたのだが、ジルはその馬車から目を離せないでいた。
いったい、何事だというのだろう。

