「あ、ズルい。
ジル。俺のも見てくれよ」

「俺の方が先だい」


一人の子だけに集中して教えると、次から次へと自分のアピールを始める少年たち。


先生役のジルの取り合いが始まりだす。


「分かった。
分かったから、ケンカはしないの」


自分の周りに集まってくる子供たちを宥めようとしたとき、広場の向こう側からこちらに向かって叫んでいる少年の声が届いた。


「お〜〜〜い。
みんなぁ〜〜〜〜!」


振り返ってみると、大きく肩を弾ませながら慌てて走ってくる少年が一人。


その少年はジルの横までやってくると、一旦呼吸を落ち着かせようと肩を揺らして深呼吸した。