リィズ村のはずれにポツンと佇む、山小屋風のダレンの店。


ここいらでは珍しい<何でも屋>なるものをダレンは営んでいる。


旅で収穫した品物をいい値段で買い取ってくれる、
ジルやローグの馴染みの店だ。



そんなダレンの店を後にすると、辺りは既に夕暮れ時に包まれていた。


どこからかカァーカァーと烏の鳴く声がする。



外で遊ぶ子供たちを、早く帰るように促す大人たち。


今夜の夕食のメニューに心踊らせながら、母親に手を引かれて帰って行く。


その傍らでは、農作業に精を出した農夫が手押し車に収穫した野菜を山のように載せてゆっくりと歩いていく。


村人たちは決して裕福な暮らしをしているわけではないが、それなりに充実した日々を送っている。



ローグは換金したばかりのコインを一枚弄びながら、真っ赤な夕陽を眺めた。


夕陽は丘の向こうへと沈もうとしている。


土色だったその丘は、夕焼けで赤く染まり、絶大なる存在感を醸しだしていた。


ーーー赤い丘………。


とても美しい光景だと思った。


タティウスの丘がここまで綺麗に赤く染まるのは珍しい。


だが、直に日も暮れるだろう。


この丘の美しい姿をジルも宿の窓から眺めているのだろうか。



ジルの顔を思い浮かべると、ローグは素早く踵を返し、足早にかすみ荘へと戻った。