だが、心配事はローグのことだけではない。


どうしてもカチュアのことが気になってしまう。


帰りの道中で気持ちを整理したいと言っていたが、今回のことを彼女は落ち着いて受け止めることができたのだろうか。


どちらにしろ、後は彼女に任せるしかない。


カチュアの心は強いと思う。

時間はかかるかもしれないが、きっと今回のことを乗り越えて、彼女らしく生きていってくれるだろう。


そう信じるしかない。



先ほどまで夕焼けに染まっていた空が、夜の帳に覆われていく。


時間がゆっくりと流れていく中、そんな光景を窓越しに眺めていると、ぐぅっとジルの腹の虫が空腹を知らせた。


初夏から本格的な夏へと移り変わっていこうとするこの季節、陽の出ている時間は徐々に長くなってきている。


もう、夕食の時刻だろうか。

時計を確認すると、少し早い気もしたが、お腹も空いてきているのならと、ジルは夕食に出掛けるかとにした。



久しぶりに訪れるぽんぽん亭は、相変わらず活気づいていた。


ここのところ、かすみ荘のスピルおばさんの気遣いで、ご飯をご馳走になっていたのだが、サダソたちがいなくなったこともあり、食事サービスも日常に戻ってしまったのだ。


「ジル。久しぶり」


食事を楽しむ客たちの談笑に混じって、ミシェルがジルを迎える。

同じ村にいたとはいえ、ミシェルと顔を合わすのも久々だ。


ジルは愛想よく手を振った。