次々に事態が展開し、あまり考える時間がなかったが、クリストファーはサダソたちと先に馬車に乗って出かけたのだ。


どうやって二人を出し抜いたのだろう。


もしかしたら、サダソたちは既にクリストファーに殺されているのかもしれない。


サダソはクリストファーの父親の自殺の一件にも絡んでいた。


ならば、クリストファーによって殺されていてもおかしくはなかったのだ。



だが、スコットの話によると二人はまだ生きているようだ。


ただ、意識を失ったままで三日ほどが過ぎている。


このまま目を覚まさなければ、命も危ういかもしれない。


と、ここでジルの頭に疑問が湧き上がった。


クリストファーはどうして二人の息の根をその時に絶たなかったのだろうか。


殺すつもりで今回の計画を実行に移したのは間違いないだろう。


考えられるのはただ一つ。


クリストファーの潜在意識の中で、それを拒否していたのではないだろうか。


本当は殺すつもりだった。

だが、無意識のうちに、それを避けてしまった。


クリストファーには本当は人殺しはできなかった、と。


そう考えると、毒を盛られたという国王の状態にも希望が持てるかもしれない。


治療を続ければ、毒素も抜け、回復の兆しが見えてくるかもしれない。


魔法による治療も一つの方法だろう。