そよ風に揺れるレースカーテン越しに、ジルはその赤く夕焼けに染まる空を眺めていた。
その空の下には、同じく赤々とした色に染まったタティウスの丘が広がっている。
その美しい丘の姿を見ていると、あんなことが起こったのが嘘だったかのようだ。
ジルたちがリィズ村に戻ってきてから、一週間が経っていた。
そして、戻ってきてすぐにスコットから聞かされたこと。
それは、自分たちが旅立ってすぐにイスナの馬車が戻ってきたということだった。
馬車の中には老人と兵士が意識を失って倒れていたという。
サダソと鉄仮面兵士だった。
放っておく訳にもいかず、スコットは二人を開放し、宿屋の一室に休ませているという。
だが、未だに意識は戻らずのままらしい。
「訳が分からねぇよ。
そっちは無事だったのか心配してたんだぜ」
スコットが参ったという表情で二人を見回した。
相談する相手もおらず、とりあえずジルたちが戻ってくるのを待っていたとスコットは言った。