ジルたちがリィズ村に辿り着いたのは、それから丸一日経った翌日の夕刻の頃だった。


どうやって帰ってきたのか、バルバロッサの森をどう抜けてきたのか、あまり記憶がない。


精神的にも肉体的にも疲労を重ね、ただ黙々と村に辿り着くことだけを考えて歩を進めていたと思う。


リィズ村の奥にあるかすみ荘まで辿り着いたとき、いち早く玄関を開けて中に駆け込んでいったのはカチュアだった。


玄関ロビーに佇む階段を駆け上がり、逃げるように姿を隠す。


外からでもカチュアが乱暴に部屋と扉を閉めた音がはっきりと聞こえた。


そんなカチュアの姿を、何の声も掛けられず、ただ黙って見ることしかできなくて、ジルは肩を落として溜め息を漏らした。


「一人になりたいんだ。
今はそっとしておくしかねぇよ…」


ジルの胸中を思ってか、ローグがそっとジルの肩に手を置いて言った。


そのローグをそっと見上げる。

彼もやり切れない表情をしていた。


うん、そうだね。

ジルは心の中で呟くと、もう何度ついたか分からない溜め息をついた。


何とか村に辿り着いた安堵感はあるものの、カチュアを思うとそれも薄らいでいく。


疲労も溜まりきっていた。