Red Hill ~孤独な王女と冒険者~


それから口数少なく歩き続けてどのくらいが経っただろうか。


太陽は西に傾き、紅に空を染め始めている。

あっという間に日が暮れるだろう。


これ以上進むべきか考えていたとき、あの吊り橋の架かった渓谷に差しかかった。


朝と変わらず、渓谷の底は飽きずに激流を流し続けている。


「ここを渡ってから、野宿の準備にしよう」


今朝の記憶では、この先に少し休めそうな場所があった。

それを覚えていたローグが提案し、カチュアの手を取った。


往路はローグが怖がるカチュアを抱えて渡った橋だが、今のローグでカチュアを抱えることはできるだろうか。


それでも同じようにカチュアをローグは肩に担いだ。

火傷の痛みで顔をしかめている。


「ローグ。大丈夫?」


「あぁ。問題ない」


心配するジルにローグはそう答えると、吊り橋に足を掛けて渡っていった。


朝よりも軽快な足取りではないにせよ、安定を持って吊り橋を渡っていく。

本人の言うとおり、問題はなさそうだ。


ローグが吊り橋の半分くらい渡ったところで、ジルはクリストファーの背中を叩いて後に続くように促した。


彼は何かを伝えたいように振り返ってジルを見る。


それに対し、顎でくいっと行き先を示すと、クリストファーは渋々渡り始めた。


一歩ずつ、渡された板を踏みしめるようにゆっくりと歩いていく。


彼の腰に結びつけられた麻縄を握ったジルも、それを握り直して後に続いた。