「でも、姫を傷つけたことに変わりはないわ」


ジルはぴしゃりと言い放った。


それはクリストファーの言い分で、今になって反省の弁を述べたとしても犯した罪に変わりはない。


「あぁ…。そうだな…」


クリストファーは分かっているとでも言いたげな表情でジルを見て頷いた。


それはスッキリとしたようにも見受けられた。

すべてを暴露し、罪を認め、姫を殺さなくてよかったと安堵している。


だが、その表情がジルを苛立たせた。


「どんな理由があったにしろ、あなたのしたことは間違ってる」


クリストファーにジルは強い視線で睨み上げた。


この男のしたことは許せない。

その身に起こった不幸には同情するが、国王と姫の暗殺を謀った事実は消えることはない。


その上、この男はローグまで傷つけた。


あの時、ジルの中で何かが弾け飛んだのは言うまでもない。


怒りのままにクリストファーを殴りつけた。

それこそ、『殺してやる』という強い思いで。



殺人は犯罪だ。

それも最も重い罪になる。


それは頭では分かっている。


あの状況で殺さずに済んだのはカチュアのお陰だ。


そういう意味ではジルは殺人という罪を犯さなくてよかったと胸を撫で下ろさなければならないが、この男に対する怒りが消えてなくなった訳ではない。