ローグと呼ばれたこの男の本名は、ローグ・A・アンダーソン。


ジルと同様にこの世界を旅する冒険者で、いつの頃からかジルと行動を共にしている。

言わばジルの相棒である。


歳はジルより三つ上の27歳。


背は高く、こちらも身体は無駄なく鍛え上げられていた。



「びっくりしたのはこっちだぜ。いきなり刃物向けるこたぁねぇだろ」


無造作に伸びた焦げ茶色の髪を掻き揚げながら彼は言った。


口調は怒っているようにも聞こえるが、目は笑っている。


「悪かったわよ。
だって、いきなり背後から音がしたから…」


こんな鬱蒼とした森の中でなら警戒するのは当たり前だ。


彼女が冒険者ゆえの性。
無意識での反応なのである。


もちろんそれはローグも分かっている。

なので、もうあまり気にはしていないようだ。