その時、ガサッと静寂な森の中にジルの背後から茂みの揺れる音がした。


一瞬にして察知した人の気配。


「誰っ!」


言うが早いか、ジルは反射的に脇に置いていた自分の武器のダガーを抜くと、素早く振り返ってダガーを向けた。


が、ジルの腕はそこに現れた人物にガシッと掴まれてしまった。


向けられたダガーに怯むこともなかったその人物は、


「俺だよ、俺」


少し怒ったような口調で言った。



スラリとした長身の男がジルを見下ろしている。


その男の顔を見ると、ジルはホッとしたようにダガーを革の鞘へと収めた。


「ローグ…。
もう、びっくりさせないでよ」