ジルは静かに深く息を吐くと、唇を結んでクリストファーに向き直った。


「帰ったはずのあなたが、どうしてこんな所にいるの?」


クリストファーは微動だにせず、先ほどと変わらない無表情でこちらを見据えている。


それが余裕の表情なのかジルには分からない。


ただ、嫌な汗がジルの額にプツプツと浮き上がってきた。


クリストファーの視線を受け、ジルは僅かな時間で思考を巡らせた。



サダソの帰還。

国王の病状。

姫の儀式。

そして、魔法陣と召喚された化け物…。


何者かが巨大蜘蛛の化け物を召喚したことは確信していたが、それを実行したのは目の前にいるこの男だというのか。


どちらにしても、この男は何か知っている。