「いや…うーん。…今?」 「今!」 俺が困っているのをみて、楽しそうに笑う柊から目を逸らした。 うわ、 ガラにもなく、緊張してる? なんとかこの場をやり過ごせないかとも思ったが、伝えないといけないことは、 はっきり伝えるべきだ。 咳払いをしてから、改めて柊に向き直った。 「わかった。その代わり、お前逃げたりするなよ」 柊は俺の真面目な表情に気づいて、笑うのをやめてこくりと頷いた。 騒がしい声も、 甘い香りも、 高揚した空気も、 どこか遠くへ消えた気がした。