たとえ愛なんてなかったとしても

「うちのメンバーがどうかした?
ミヒもそろそろ練習再開するから戻って」



お互いに刺々しい言葉を発して臨戦態勢に入っていたけれど、うちのリーダーの登場により、空気が一転。


さっきの私への態度が嘘かのように、何でもありませぇんと猫なで声をしてガラっと態度を変える女。


私の方はまだ言い足りなかったので、口を開こうとするも、その前にエリックさんに腕を引かれて、引き離される。


無言で腕を引き、いつも打ち合わせなどに使う部屋に誘導される。



「何だって問題ばかり起こすんだ?
無駄に敵増やして何のメリットがあるんだよ。
もう少し考えて行動できないのか?」



二人して椅子に座ったとたんに、苛立った様子でそう言われる。



「向こうから絡んできたんです。
整形前の顔でよく芸能人目指せたね、って。
整形前の私がきれいじゃないのは本当のことですけど」



「そんなのはいちいち相手にするな。
さっきのやつも人気なくなってきて落ち目で妬んでるだけなんだから、ほっとけよ」



基本的には人に無関心だけど、彼はグループや自分にとってデメリットになることを極端に嫌っている。


人に優しいわけでも、メンバーを心配してるわけでもなく、ただ損得のみを考えて。


けれど、心の中では見下しているのに心配した振りをする偽善者よりは、よほど好感が持てる人。