「すぐに思い通りになる女なんて、つまらないでしょ?
なびかない女が好きみたいだし?」



つまらないというよりも、並の男だったらその態度じゃとっくに去っていってると思うけど。


赤いグロスが塗られた唇でにっこりと笑うキャシーちゃんは、綺麗だけどものすごく毒々しい。

とげのある薔薇とかそんな可愛いレベルではなく、一度噛まれたら助かる手段もない猛毒を持つ毒蛇みたいな。


手を出さなきゃいいって分かってるのに、彼女には一度ハマったら抜け出せなくなるような魅力があるんだろう、きっと。

それは認める、でもさぁ。



「屈折してるねー……。
少しは優しくしてあげたらいいのに」


「いいのよ、俊輔は私にいたぶられるのが好きなんだから」



......もういいや、僕しーらないっと。

僕から見たら理解できないけど、本人たち楽しんでやってるみたいだからいいや。

どうぞ思う存分いたぶってほしい。


僕も人のこと言えないし、人間なんて必死に普通の振りしてても、どこか一つくらいおかしいところがあるものなのかもしれない。

どれだけ親しくなったと思っても、一つくらいは理解できないところがあるように。

そんなものなんだよね、きっと。


そう納得して、もう口を出さないことにした。