月をまたいで行う全国ツアーも、ようやく最終日。


ライブが始めるまでの束の間の休息を、控え室で俊輔くんと二人で過ごしていた。



「色々あったけど、全部上手くいって良かったよねー。

ミヒちゃんとキャシーちゃんも仲直りしたし、炎彬くんも彼女と上手くいったみたいだし」


「......そうだな」



ツアーの準備や、ツアーの間は怒涛のように過ぎていったので、なつかしむ暇もなかったけど、今日で最終日ということもあって、少しホッとしたのか、そんな話をする、けれど。

ホッとしているのは僕だけで、俊輔くんは浮かない顔。


そうだよ、うっかりしてたけど、ここに上手くいってない人がいたんだ。



「ごめん、ごめん、全部じゃなかったね。
そんな落ち込まないでよ。
なんなら女の子紹介しようか?」


「いい。
俺さ、気づいたんだよな、俺になびかないキャシーが好きなんだ。
俺に優しいキャシーとか、キャシーじゃない!」


「ええ?む、報われないねー......。
それじゃ永遠に片想いじゃん。
俊輔くんがいいなら、いいんだけどさ」



やばい。
片思いこじらせておかしくなっちゃったのか、元から素質があったのかは分からないけど、俊輔くんがヘンタイになっちゃった。