たとえ愛なんてなかったとしても

「言おうとしたけど、聞いてくれなかったじゃないですか!
連絡も全て無視されて、どうしようもできないです。

それに、騙してたことは事実です。
嘘ついて近づいたわけだし......。

それで近づいても女として見られてなくて、全然だめって友達に相談してたら、ちょうど炎彬さんが......」



むっとしたような顔で俺を見た後に、どんどん落ち込んでいくレイナ。

確かに話を聞かなかったのは俺だ。
けれど、それ以前にものすごく誤解があるみたいだ。


カメラマンがもっと笑顔で、と指示を出しているけれど、笑顔になる前に先にしないといけないことがある。



「話を聞いてないのは、そっちだろ!
なんで女として見てないなんて思ったんだよ。

俺から何度も誘ったし、レイナみたいな子と付き合いたいって何回も言っただろ」


「えっ.....。
それはあまり人には言えない趣味の話ができて、私みたいに同じ趣味の子と付き合いたいって意味かと。  

だって、実践しようって言っても、いつもはぐらかしたじゃないですか!
私には興味わかないんじゃないかと思ったんです!」



大声になって周囲に聞こえないように、お互い声をひそめながら、言い合う。

カメラマンがうるさいので、笑顔を作りながら。


この場にいる誰もが、俺たちがこんな話をしているなんて思っていないだろう。