たとえ愛なんてなかったとしても

「早速さっき打ち合わせたようにしてもらえるかな?

自然体にやってくれたらいいからね。
そのために本業のモデルじゃなくて、二人を呼んだから」



俺たちの個人的事情なんてまるで知らないカメラマンは、固まっているレイナに軽く説明した後、撮影の準備に入るように促した。


仕方なく、通行人やスタッフに見守られる中、撮影のために一部通行規制された、港が見える場所に移動する。


ポーズはとらないで、適当に仲良さそうに話してみてやら、恋人とデートしてる時みたいに、とか遠くの方でカメラマンは好き勝手なことを言っている。


注文通りにするどころか、目も合わせない俺たち。

このままでは永遠に撮影が終わりそうにない......。


どう注文をつけられても、自然体で仲良く、恋人のように、できる気もしないけれど。

マネージャーのスタッフに迷惑にかけるなという言葉を思い出し、不本意ではあるけれど、レイナの手を握った。



「あの......?」


「仕事だから。
撮影の間だけは、彼氏と思って。
そしたら、すぐ終わるだろ」



驚いたようにこっちを見るレイナに、俺もレイナの顔を見ながら話すと、シャッターが切られていく。