たとえ愛なんてなかったとしても

「何か好きな日本語はありますか?」



今日の俺の仕事は、女性誌のデート特集の撮影。デート特集ということで、デート形式で撮影らしいが、撮影に入る前にインタビューを受けていた。


好きな日本語、か。
先ほどまで、マネージャーと大激論していたのもあって、悪い言葉しか思い付かない。

そんなものを言うわけにはいかないので、なんとか良い意味の言葉を絞り出す。



「一攫千き......」


「違う、違う!
好きな言葉は助け合い、だったよね!

ね?ね!......ね!?」 



最後まで俺が言い切る前に、少し離れた位置でスケジュールの確認をしていたマネージャーがものすごい勢いで駆けつけてきた。

半端ないぐらいの地獄耳だ。



「好きな言葉は、助け合い......と。
それでは、今後の目標を教えて頂けますか?」



マネージャーの勢いに圧倒されていたら、よく分からないうちに好きな言葉が助け合いにされ、次の質問にうつっている。