本業は歌手だけど、タレントのような売り方をするのが事務所の方針なのか、俺たちのバラエティの出演もよくあることだ。

それぞれ各国でCMに出たり、ドラマに脇役で出たこともある。


自分のやりたい方向性とは違うと不満を持っているやつもいるかもしれないが、俺としては収入が増えるなら、むしろ大歓迎だ。
 

ただでさえ、うちの事務所の社長は超がつくほどの守銭奴だし、CDなどの売上もメンバーに等分されて取り分も減る。

それに、そろそろ両親への二軒目のマイホームと車も贈りたいので、多少ハードなスケジュールになっても、なるべく稼いでおきたい。



「日本のファッション誌は初めてだけどな。
俺みたいな高身長イケメンは、国も場所も問わず重宝されるってことだ」



そう言うと、俊輔は下から上まで俺をジロジロ見た後に、呆れたように俺を見る。




「......それは否定しませんけど。
はぁ......、黙ってたら、いいんですけどね」


「どういう意味だよ。
何で黙ってないといけないんだ。

現状に満足することなく、忙しくても、ジムに欠かさず通って、体型維持に務めてるし、そのうえ日本語の勉強も毎日してる努力家だ。 
俺のどこに問題がある」



呆れたように見られたばかりか、ため息までつかれては黙っていられず、早口で俊輔に詰め寄る。

しかし、俺が詰め寄れば詰め寄るほど、狭いエレベーターの中で、俊輔は後ずさりしていく。