「他の誰でもない、自分自身......」
  
 

ミヒは俺の言葉を反復してから、考え込むように黙りこんだ後、俺の手を握り返して、涙で濡れた顔を上げた。



「私.......、やっぱりソウルに行ってきます。

これからも、みんなと一緒に、ステージに立ちたい......、から」



メイクは涙でボロボロになっていたけれど、詰まりながらもはっきりとそれを言葉にしたミヒは、先ほどよりもずいぶんとしっかりとした表情をしている。


すぐに泣いて、カッとなりやすくて、やっかいごともたびたび起こす面倒な女。

メンバーじゃなければ絶対にかかわりたくないタイプの女なのに、どうしてだろうか。 

本当の笑顔を見せられないと苦しむミヒを、それでも俺たちとステージに立ちたいと願うミヒを、なぜだか分からないが支えたいと思うのは。


一番、近くで。



「ああ、行ってこい。
俺は、......俺たちは、ここでお前の帰りを待ってるから」



それから俺はミヒを駐車場まで見送った後、メンバーの待つ部屋へと戻った。

それぞれの、役割を果たすために。





これからも俺は、誰かに優しい言葉をかけてやることも、メンバーに温かい励ましをしてやることもできそうにないけど。

それでも、俺なりにこの場所を守っていきたいと思う。


これが俺のやりかただ、ヒョンス......。