たとえ愛なんてなかったとしても

アメリカでも大して売れてもいない曲。
それだけではなく、今大人になって聴いてみれば、そう良い曲というわけでもない。

少なくとも今の俺の好みではない。


今となっては何が良かったのか分からないが、それでも小さな頃飽きもせずに何度も聴いていた、俺とトニーの思い出の曲だ。


あの頃の夢を果たし、トニーが歌手になり、思い出の曲を歌っているのを聴いて。

理屈抜きで、嬉しかったんだ......。



「兄さん、ありがとう」



礼を言われることなんて何もないし、何がありがとうなのか全く分からないが。

大きな目に涙をいっぱいためるトニーを見て、なぜか俺まで泣きそうになってしまった。





こいつがいなければ、と何度も思った。
嫉妬もした。

それでも、トニーと家族として楽しく過ごした時間は消えてほしくても消えずに、俺の中でずっと残っていたんだ。

 
複雑な気持ちはこの先も消えることはないだろう。


けれど、この先兄弟として親しく過ごせることがなくても、血のつながりがなくても。

トニーは確かに、俺の弟なんだ。


色々なことが頭の中を駆け巡る中、それだけは確かなことだ。