たとえ愛なんてなかったとしても

しかし、何か問題があれば直接事務所から注意されるだろうし、問題がなければ俺からの忠告なんて大きなお世話だろう。

そう思い、説教はこのくらいにしておいて、ここに来た本来の目的を達成することにした。



「なあ、お前は俺と前のように過ごしたいと言ったけど、正直、これからも以前のように親しく過ごせるかは分からない。

お前が悪いわけじゃない。
......俺自身の問題だ」


「......うん」


「これからどうなるかは分からないけど、とにかく今は無理だ。
だけど、ひとつだけ伝えたいことがあって、ここに来た」


「伝えたいこと?」


 
 
くりくりとした目で俺を見るトニーは体は大きくなっても、小さな頃の面影を残していた。

何でも俺の真似をして、小さな手足を必死に動かし追いかけてきた、あの頃の......。



「ああ、さっきの曲。
あれがモニターから流れて、その、
......嬉しかった」



同じ歌手としては、なぜあの曲を選んだのか疑問に思うどころか話にならないが。

個人としては、一人の人間としては。
どんな言葉で言い訳しても、気持ちを隠しても。

結局は、あの曲を聴いた瞬間、俺は嬉しかったんだ。