たとえ愛なんてなかったとしても

「......覚えてるよ。
ここであの曲を歌う意味はないだろ。
自分の好きな曲歌いたいなら、カラオケでも行け。

だから、お前は芸能人向いてないって言ったんだよ。芸能人として成功したいなら、変な感傷は捨てろ。

それとも、兄との思い出の曲ですと言って、話題性を作るつもりだったのか?」



「そんなつもりじゃない。
......ごめんなさい、考えなしだった。
ただ急にあの曲を歌いたくなって......。

でも、芸能人としてもっとちゃんと考えなきゃね」



トニーは俺から見ればまだ子供だし、デビューしたばかり。さらに今までアメリカで暮らしていたこともあって、分からないことだらけだろう。


トニーの事務所が自由なのかもしれないし、他の事務所のことまではよく知らないが......。

誰だって自分のカラーを出したいだろうが、事務所との兼ね合いや世間もあるし、何でも好き勝手にやれるわけではない。

こいつがどうなろうと放っておけばいいはずなのに、口うるさく言ってしまうのは、やはり兄としての自分がいるからなのか?