たとえ愛なんてなかったとしても

「そういう聞き方はやめて。
もうこれ以上ミヒを苦しめるようなことはやめよう。そんなことしたって、お互い傷つくだけだろ?」
   


キャシーが本心から俺を求めているわけじゃないことは痛いほど分かっている。

ただミヒへの対抗心のためだけ、そんな理由でも誘いに乗りたくなる自分が殴りたくなるほど嫌だ。  


なんとかその、ぽってりとした唇に惹かれる衝動を押さえつけて、ぎりぎり残っていた理性を口にする。



「私は傷付かない。
ミヒが苦しめば苦しむだけ、嬉しいわ。

......立ち直れなくなるくらいに傷付いたらいいのに」



少し伏し目がちに、下唇を噛みしめて、いつもの余裕のある表情とは違った顔をするキャシー。

ここまできたらもう戻れないのか......?
ミヒも同じだ、何かにつけてキャシーを陥れようとする。 

どうして......、ここまで憎み合うことなのか?


俺はどうすればいい?
このままじゃ本当にエリックさんの言うように、ただ言われたことしかできない情けない人間になってしまう。


だからといって、ここまでこじれてしまっては修復は難しい。

八方塞がりの状況に息がつまるような気持ちになる。