たとえ愛なんてなかったとしても

「......ああ。

それ以上泣くと化粧が崩れる。
このあと撮影あるから、それまでにメイク直してもらってこい」



自分が泣かせたくせに、こんな時でも仕事の話をする俺に、ミヒは何も言わずに控え室を飛び出していった。



「あ、すみません......。
盗み聞きしようと思ってたわけじゃないんですけど、入りにくい雰囲気だったので入れなくて......」



勢い良くドアを開け、周りも見ずに走っていったミヒと、ドアの向こうにいた俊輔は入れ違いに入ってきた。


何を言ったらいいのか分からなくて、お互いに無言で見つめ合う。

どこまで聞いてたのか分からないが、謝るところじゃないだろ。そもそも、追わなくていいのか。


謝られると対処に困る。
何で泣かしてるんだとか、俺の彼女に何してるんだと怒ってくれた方が、まだ対処しやすい。