たとえ愛なんてなかったとしても

「......兄さん?」



黙りこんでいる俺に対して、俺の顔をのぞきこむトニーは小さな頃と全く変わってない。

すっかり変わってしまった俺とは逆に、小さな手足で俺の後をついて回っていたあの頃から、ちっとも変わっていない。

冷たくしても、冷たくしても、ただひたすら信じていますとでも言いたそうな純粋な目。


......ああ、もうやめてくれ。
俺はお前を見るたびに自己嫌悪に陥って、おかしくなりそうだ。



「また機会があれば共演したいですね。

時間がないので、失礼します。
おつかれさまでした」



複雑な事情はあれど、いまだ俺を慕ってくれる弟にとった行動は、兄としてのものではなく、完全な拒絶でもなく。

営業用の作り笑顔を浮かべた他人行儀なものだった。 

仕事であれば関わるが、それ以外では関わるつもりはないと以前言ったように。


そんな俺の態度に傷ついたような顔をしたトニーに気づかなかったわけじゃないが、ただ軽く頭を下げて足早に立ち去った。


そうでもしなければ、もう自分を保っていられる自信がなかったから。