たとえ愛なんてなかったとしても

最低、そっちこそ、とまたごちゃごちゃと言い合ってたら、練習室のドアのところから、エリックが顔を出して。



「何騒いでるんだよ、声が大きいから丸聞こえだ。
こっちが恥ずかしくなるから、やめてくれ。

......誰にでも知られたくないことがあるんだから、あんまり言ってやるなよ、キャシー」


「はーい」



明らかにさっきの新人と同じような勘違いをしたエリックの言葉に、私は関係ありませんというような顔をして、さっと練習室に入るキャシー。


おいおい、誰のせいでこんなことになってると思ってる!

キャシーに文句を言ってやろうとその後について入ると、まるで汚いものを見るような目で俺を見るミヒ。



「炎彬くん、すごいね!
僕でもまだそこまではチャレンジしたことなかったよー。

今度色々教えてね」



そして、キラキラした目で俺を見上げる英俊。
なんか腹立つな。

英俊にトラブルには気を付けろと言っておいて、自分がそうなってしまった。



「あの、まあ、いや、なんていうか......、俺は良いと思いますよ?趣味は個人の自由なんで」



最後には俊輔の微妙なフォローも入り、俺が誤解を解こうと口を開く前に、ダンスの先生が戻ってきて。

すぐにレッスンが始まり、俺に誤解を解く時間は与えられなかったのだ。