一瞬見なかったことにして引き返そうかとも思ったけど、戻っても結局は同じようなことになっていたことを思い出す。

あっちでベタベタ、こっちでイチャイチャ。
一体どうなってるんだ、うちのグループは。


とりあえずは英俊を止めよう。
誰が通るかわからないし、変な噂を立てられても困る。

そう思い、喫煙所に足を進める。



「リハーサルの前に打ち合わせするから、早く戻って」



プロデューサーのおっさんに挨拶した後に、英俊の腕をつかんで、半ば無理やりおっさんのひざの上から立たせる。

英俊が何か言う前に、先におっさんがじゃあまたと言って、そそくさと出て行った。



「なに?
打ち合わせなんて、なかったよね?
楽しく話してたのに邪魔しないでよ」



むぅと頬をふくらまして怒る英俊。
見る人から見れば可愛いんだろうけど、今の俺には腹が立つだけだ。



「楽しく話してただけなら、全然いいけど。
ひざの上に乗る必要あるか?

とうとう男にまで手を出し始めたのか」



楽しく話してただけなら、問題はない。

それだけなら、誰も文句は言わないが、
それだけじゃないなら困るんだよ。


こいつがわりと遊んでるのは知ってたけど、部屋かホテルでイチャイチャするならまだしも、公共の場でおっさんとイチャイチャするのはさすがにやめてほしい。