たとえ愛なんてなかったとしても

「事情を知っていて、こんなこと頼めるの俊輔さんくらいしかいなくて。

俊輔さんと付き合えば二人に対する当て付けになるってのも、少しはあります、けど。
友達にはなりたいけど、このまま何もなかったことにするのは悔しいんです」



友達にはなりたいけど、当て付けにどちらとも関係がある俺と付き合ってやりたい。

矛盾しているようだけど、分からなくもない。


俺もエリックさんとは険悪になりたくないし、キャシーとも良い関係でいたい。


ただキャシーの幸せを願う一方で、エリックさんともできれば親しくなりたいと願う一方で。

今までの因縁、届かなかった気持ち。
悔しさや嫉妬、憎しみ、自分でもよく分からない黒い感情がある。


言葉には言い表すことができない複雑な相反する気持ちが渦巻いていた。



「エリックさんもキャシーも、俺たちが付き合っても気にしないだろうけどな。

......いいよ、俺たち付き合うか」



どうして、こうなったのか。
俺も、ミヒも限界まで追い詰められていたことや、タイミング、他の要因もあったかもしれない。


この時、俺が、俺たちが選んだ答えは正解だったんだろうか。

正解でも、正解じゃなくても。
この日俺は、キャシーよりもミヒを選んだ。


その事実は決して変わらない。
変えることが、できないんだ。