「ずるいよ......キャシー......」



言ってやりたいことはたくさんあった気がするけれど、頭の中がぐちゃぐちゃで、どれも言葉にならなくて。

ただ黙ってキャシーを引き寄せて、だきしめる。


その夜、俺はキャシーを抱いた。


上海の時よりもはっきりと自分の気持ちを自覚して、ちゃんとした彼氏彼女にならなければしないと我慢することはできなかった。


お互いに好き合って付き合ってからが一番の理想だ。

自分の中に理想像はあっても、俺はそこまで我慢強い男でも誠実な男でもなかったみたいだ。


経験もテクニックももちろんない。
その代わり、何回も好きと言って、たくさんの愛を込めて、キャシーを愛した。




次の日からは二人で観光して、手をつないで、たくさんキスをした。

まるで本物の恋人同士のように。


少なくてもパリにいる間は、俺だけのキャシーだったんだ。


次の日からはもう違っても、たしかにこの時だけは俺だけの彼女だったのに。