「良かったね、英俊。
で、ご飯は?どうするの?」


「俺が払うから、みんなが食べたいもの食べに行こう。

この前途中で帰ったから、埋め合わせだ」


「じゃあ、北京ダック!
大きいの一羽丸ごと!!
どうせなら専門店に行きたい」


「いいね、俺も北京ダック食べたい」



気前良く言うと、遠慮のかけらもない英俊に俊輔までもが同意した。


あれ、高いんだよな......。

安い店で食べれば安く食べれるけれど、そういった店は本当に北京ダックかどうかも疑わしいし、そんなところに連れていけるわけもない。



「ミヒとエリックは?行くの?」



全く会話に入ってこなかったから、存在を忘れていたが、キャシーの言葉で二人の存在を思い出す。

そういえば、いたんだよな。
二人の分も俺がおごる流れだよな、間違いなく。



「北京ダックの予約しとくから、ホテルに帰ったら一時間後に全員集合な!」



半ばヤケクソになりながら、俺はそう言った。


偽物財布で失った面子が回復するなら、北京ダックの一羽や二羽、腕時計の一つや二つ、安いものだ。

回復するのかは定かではないが。