たとえ愛なんてなかったとしても

「たまたま財布は偽物だっただけだ!
家に帰ればたくさん本物がある! 」



そう言って俺はカバンから高級ブランドの腕時計を取りだし、これみよがしに腕に付けてみせびらかした。



「いいか、本物と偽物、両方持っていてこそ違いの分かる男だ。

偽物だけでもダメだし、本物だけでも有り難みが分からない」


「はあ......俺にはよく分からないです」


「うん!よく分からないけど、その腕時計かっこいいね!」


「そうか?そんなに気に入ったなら、英俊にやるよ」



キャシーからは無言で何言ってるのというような目で見られ、誰からも賛同を得られず。


腕時計を誉めてくれた英俊に嬉しくなってそんなことを言った。
もちろん社交辞令で。



「本当に!?いいの!?
やったぁー!!さすがメンバーで一番稼いでる人は違うね」


社交辞令......のつもりで言った直後に目にも止まらぬ速さで、腕から奪いとられる。



「英俊!図々しいだろ!
炎彬さんに返しなさい!」


「いいんだ、俊輔。
た、たかが30万の安物だし、家に帰ればたくさんある、から......」



喜ぶ英俊に今さら返せとも言えず、涙をのんで、腕時計に別れを告げる。

買ったばっかりだったのに......。
大事にしてくれよ、英俊。