たとえ愛なんてなかったとしても

「ねえ......やっぱりさ......」


「いや、エリックさんきたら、よけい事態悪くなるって」


「俺が何だよ」


「エ、エリックさん!おつかれさまです!
い、いつからここに?」


「さっきだけど。
おい、どうした?」



エリックさんの話をしていたら、張本人のご登場。

どうした?は明らかに私に向けた言葉なのは分かるけど、あれだけ会いたいと言っていたにも関わらず顔を上げることができない。


だって、声の不機嫌さが半端なくて一気に酔いがさめた。

まるで地獄からはい上がってくるかのような、というのは言い過ぎだけど、いつもの低音にさらに磨きがかかっていらっしゃる。

ライブでは低音が出しきれてなかったのに......とか口に出すとさらに事態が悪化するから、心に留めておく。


「僕たちが冗談言ってたら、その、泣いちゃって。
悪ノリしてごめんね、ミヒちゃん」



何も言わない私の代わりに答えてくれる英俊。

どちらかと言うと悪ノリしてたのは、私の方なのに。