ケイは早速黒いジャケットを羽織り、
腕を広げてみたり裾を伸ばしたりした
私は彼のそんな姿を見ながら、
駅前のパン屋に声をかけた
「タエおばさーん」
私はいつものように、
おばさんを呼んだ
「はいはーい」
おばさんは、店の裏側から
手をエプロンで拭いながら出てきた
そして私の顔を見て、
「いらっしゃいイクミちゃん」と
微笑んだ
ここ<野原ベーカリー>は、
タエおばさんが経営するパン屋
こじんまりとしている雰囲気と、
パンの美味しさから人気がある
タエおばさんは、町の皆の
母親的な存在であったりもする
「あら、ケイ君もいたの」
「こんにちは、タエおばさん」
ケイは私の後ろからヒョコッと顔を出し
軽くお辞儀をした
するとおばさんは、ケイの着ている
ジャケットに目を移した
「あら、良い服を着ているのね。
これから何か用事でもあるの?」
おばさんは、少し嬉しそうに言った
私は「はい」と笑って答えた
「博士のところへちょっと」
「そう、やけに嬉しそうね」
おばさんはショーウィンドーから
メロンパンを2つ取り出した
私たちはいつも、メロンパンを頼む
ここのメロンパンは、
とても美味しいと町で評判なのだ
「ついさっき焼いたばかりなのよ」
そう言っておばさんは、いつものように
小さな袋にメロンパンを入れた
「あ、タエおばさん」
ケイは私の後ろから、声を出した
「あの、シュークリームも追加で」
それを聞いて私は、思わずに振り向いた
「どうして?」
「今日はパワーアップするからです」
ケイはそう言って、私の顔を見た
私は仕方なく、「それでお願いします」
とおばさんに言った
「はいよ、シュークリーム2つ追加ね」
私はおばさんにお金をわたし、
おばさんは私に袋を渡した
「また今度、おばさん」
そして私とケイは、研究所の方向へと
向きを変えて歩き出した
「気をつけるんだよ!」
おばさんは私たちに向かって
大きな声で言った
私とケイは、おばさんに向かって
大きく手を振った

