ふと、右側で涼やかな水の音が聞こえ、音の方向へ目を向ける。


 煉瓦の脇の細い土手。その奥に、ちらりと川が見えた。

 土手に近寄る。ニスが塗られた丸太の手すりの先が断崖になっている。

 手すり越しに覗き込む。


 川は、私の遥か下を流れていた。




 シロサギが一匹、角張った石の上で身じろぎ一つせず置物のように停まっている。



 時折水の流れに逆らうように、小さな黒っぽい影が動く。姫鮎かイワナでもいるのかもしれない。




 ペットボトルの水とここを流れる川は、きっと上部でつながっている。


 川が見えたのなら、頂上も近いのかもしれない。

 そう考えると、足取りも軽くなる。




 せせらぎというには強い音を立てて、川は豊かに流れていた。