ようやく玄関が開いた時、目に映ったのは慌てふためく母の姿ではなく、全身を完璧に着飾って「行ってくるわね」と、家の中に呼びかける母だった。


 耳たぶで、銀色の大きなピアスが揺れていた。

 母はそのまま、呼んでいたタクシーに乗り込み去って行ったのだ。