外ハネした長めの銀髪が印象的な人。大きな黒眼が、俺を捕らえて離さない。

否、離れられない。自らと視線を外すことが出来ないのだ。



「だ、だれ……」


「だれ?そんなこと、どうでもいいだろう。我と貴様の間に、呼び名なんぞいらぬ。のう、佐雄よ」


「っ、なんで、俺の名前知って…」



困惑の色を隠せない俺に、ニヤリと口角を上げ近づく黒男。


スッと俺の目の前でしゃがんだかと思うと、俺の左手を黒男が掴みこんだ。


左手の指の先が赤い。


あ、これってさっき黒魔術発動させたせいかな。何故か身体中の傷とか治ってっけどさすがに“闇”は癒せないもんなんだね。


なんてことを思っていると、ふいに左手の指先に生暖かい感触がした。

「………。ん?」ぎこちなーく視線を指先に戻す。


…………。あるぇ?


な・ぜ・か、血で汚れた指が黒男の口内に含まれていた。

おい、おいおい、オイオイオイオイオイッ、何コレなんだよこれー!


「っ、なに、してっ……」


「見れば分かるだろう?傷を癒しておるのだ。舐めれば治るというだろうに。む、血の味がするの」


でしょうねえ!

そりゃアータ、血が出てんだから血の味がする…って、そうじゃなくて!



「そっ、そんな民間療法ためすよりっ、フツーに絆創膏渡してくれりゃっ………ひぃっ!」


「ん、舐めれば舐めるほど出てくるの」

「だだだだっからバンソーコっ…」

「持っておらぬわ、んぐ」

「ひうっ!なっ、なら治癒まほー…」

「我には無理ぞ」


ノオオオオオオーッ!!


ぬるっとしているような、舌のざらりとしたような、…なんかキモチワルイよこの感触っ!

つーかこれセクハラだよねっ、セクハラだよねえっ!