ま、そのぶん代償は大きいんだけどね。



「佐雄っ!おまえっ……」


「だいじょ、ぶ……っごふ、っぅ……………すぐ治るって……っ!げほっ、ごふっ、かはあッ」



ボタっボタっ…


俺の足元には血溜まり。靴は赤黒く変色しちまってる。


ゴウゴウと風が俺たちの周りの空間を壊し、火がもうもうと建物を崩し、大地の揺れで歪みが出来た。


ああ、やっと、やっとだ。
もう少しで出られる。



そう、思っていたのに。



「あッ……あああああああああああ!」


「さ、お……?っ、佐雄ーッ!」



倭草が俺に手を伸ばし、少し離れたところから爺ちゃんと十六夜さんがこちらを心配そうに見てくる。


内蔵が、破裂するような。
体の内側が、ひどく、熱いんだ。


意識が遠のくなか、俺はハッキリと見た。


倭草の泣きそうな顔と、顔をしかめる爺ちゃんと、不機嫌そうな十六夜さんを。



薄れゆく意識のなかで、3人の表情がひどく目に焼きついた。


それと同時に、本来の空間、…今はもう放課後でオレンジ色に染まった校舎が、より鮮明に3人をうつしだす。



あ、もう、だめだ。



最後に俺は、天使を見た。
……ような気がしたけど、きっと気のせいだろうな。


だって、雨乱がいるなんて、そんなこと。



……………あると、いいな。

なんて。