「お前ッ……!」



なんと、爺ちゃんが捕まえてきたのはアノ倭草の偽者だったのだ。

倭草の偽者ということも含め、俺たちを遠くから監視していたこの輩に自然と顔が強(こわ)ばる。



「あっ、佐雄!よかった、無事だったん………」


「ちがう」

「え?」



“にっこりと笑う倭草”に、俺は首をふって偽者を睨みつける。



「倭草じゃない。お前が、倭草のハズがない」


「は?ちょ、何言って……っ」


「だって、俺の知ってる倭草はそんな笑い方しないし、焦ってる時にすぐ冷静になって考えられるタイプじゃないしっ、なにより!

無情に相手を殺したりなんかしない!

例えそれが突然襲ってきた奴でもっ、倭草ならソイツを押さえるだけで簡単に殺そうなんてしないっ!」


「さ、お……」

「……倭草は、優しいから」



ポツリと呟いた言葉に、偽者の倭草は力なく項垂れる。

爺ちゃんと十六夜さんは、そんな俺たちのやり取りを黙って見つめていた。



「……なんで、なんで倭草は消えたんだよ……そんなに俺が、頼りない?だから、俺から離れていった?……そりゃそうか、だって俺は………」


「佐っ………」

「ちげえよッ!!」


「「「?!」」」



爺ちゃんが俺の名前を呼ぼうとして、またそれを遮った偽者に、俺だけでなく爺ちゃんと十六夜さんも驚いた。


目を向けた先には、爺ちゃんお手製のロープに縛られた偽者倭草。


だけど、その目を見たとき、俺はまさかと目を見開いた。

息を荒くする偽者倭草。俺をキッと睨みつける偽者倭草。


その瞳はどこかで………