雨乱探しから既に一時間が経過しようとしていた。


これはやっぱ、何かが雨乱と関わっているに違いない。


そう思ってしまうのはきっと、雨乱が鈍臭い運動オンチだって知ってるから。


普通なら今頃、雨乱は俺たちと一緒にいるはずなんだ。



そう、普通なら………。



「倭草!雨乱は見つかった?!」


「んにゃ、全然だ……。くそっ、まさかもう手遅れなんじゃねェだろうな…っ」



そう言って舌打ちする倭草を見て、俺は頭に浮かぶ疑問を倭草に聞かずにはいられなくなった。


それは倭草と行動を共にしてた姫サマも同じようで……。お互い頷き合うと俺は倭草に向き直った。



「倭草。さっきから思ってたんだけどさ………。雨乱がヤベェ事になる、って…一体どういう事なんだ?」



これはきっと聞いとかなきゃいけない。

そう、俺は頭のどっかで感じた。


そんな俺の思いが伝わったのか、倭草は少しうつ向くと決心したように唇を少し噛んだ。



「佐雄、お前にゃ一度も教えなかった………んにゃ、教えられなかった秘密が、雨乱だけじゃなく俺にもあるんだ。

とりあえず今は、雨乱の秘密だけを話そうと思う。それと、佐雄」



少し怯えた調子で俺を見据える倭草。


開こうとする口も僅かに震えていて……。


俺は、こいつらに怯えられるようなことをしたのかと思った。


だけどそれも一瞬で。
倭草の口から出た言葉には俺の心配事なんて一切なかった。


だけど、



「雨乱を、俺らを、…………嫌わないでくれるか?」



なんとも馬鹿らしい言葉を聞かされて
しまうとは。

俺も拍子抜けだ。