祥はくるっと向きを変えて歩き出す。

やだ……。

「行かないで……」

あたしはポツリともらす。

「え……?」

祥は驚いたように振り向いた。

行ってほしくなかった。

また、抱きしめてほしかった。

好きって言ってほしかった。

あーあ、気付いちゃったよ。

あたし、まだ祥のことが好きなんだ。

前よりも、もっと好きになっちゃったんだ……。

「麻結、今なんて言っ……」

「麻結ちゃん!」

祥の言葉を遮って波斗君は言った。

「オレ、麻結ちゃんのことが好きだ。ずっと前から好きだった」

辺りがしんとなる。