「沙妃は、絶対幸せにならなきゃいけないんだからね」 つないだ手に、力がこめられる。 命令に聞こえるけれど、これは祈りだ。 綾乃にも、どんなに立派な人にだって、この迷路を笑顔で抜け出せる道順を見出すことなどできない。 あまりにも困難な状況を前にして、祈るしかできないんだ。 でも、祈ってくれる人がいる。 だから私は、答えを出したい。 この状況を打開する、答えを。 私の中で、何かが動き出す。 「大丈夫だよ」 私は、綾乃の手を握り返した。