「ちょっと、人が真面目にやってるのに、どうして笑うの?」


「だって、だって……!」


「まだまだ終わらないのよ、最後まで読んであげる!

解つて居ますー此の想ひはー……」


「やめて、もう、お腹が痛い……!」




と、こんな感じで、笑うことが増えたのだ。




そして海の家での経験が自信になったのか、対人恐怖症も克服できつつある。


同じ学科の学生と、少しずつではあるけれど、挨拶程度の会話はできるようになってきた。


でも、それにともなって思いがけない事態が。




昼休みや、放課後、講義の狭間、さまざまな空き時間を見計らって。


裏庭、図書室、人気の少ない場所に呼び出され。




「俺と、つき合わない?」




そんな申し出に、度々見舞われるようになってしまったのだ。




綾乃曰く、


「沙妃が幸せオーラを振りまいてるからよ」


とのこと。


自分ではよく分からないのだけれど。




始めはどうしていいか分からなくて、びっくりして逃げ出したりもした。


でも、気持ちの大きさは量れないけれど、相手は私を想ってくれている。


私が、圭吾さんを想ってるのと、同じように。


それに気づいてから、「ごめんなさい」に「ありがとう」を添えるようになった。


みんなは優しくて、寂しそうに笑いながら、私の答えを受け止めてくれるのだった。