全員が席に揃い、俺がいただきます・・と言おうとすると、




「っしゃ!食うぞ~!」



と、挨拶もしないで食べようとする木山の姿が目に入った。




「こら、木山!」




俺は、口に運ばれようとするスプーンを止めた。




「な、なんだよ~先生!」






「お前なぁ。いただきますは?言った?」



「へ?言ってないけど・・・??なんで?」




“なんで?”



その一言に、俺の教師魂に火がつく。




「お前さ、いただきますって言葉には色んな意味が込められてんだぞ。ただ、食べる前の挨拶ってだけじゃない。この野菜を作ってくれた人、俺たちのために食用の肉になってくれてる豚や牛。いろんな物の支えでこうして飯が食えてんだ。自分たちのためにありがとう、そういう気持ちがあってこそ、飯が食える。だから、ちゃんといただきますは言え。」







「・・・・・・・はい!先生。」



俺の気持ちが伝わったのか、木山は笑顔で“いただきます”が言えていた。


俺の話を聞いていた周りのやつらも、ちゃんと言えてる。





真心って大事。



自分が真剣なら真剣なほど、相手にはちゃんと伝わる。







でも、それ以上に、俺の話を真剣に聞いてくれてる生徒たちが愛おしくてたまらない。







素直で、良いやつらだな、ほんとに。



俺は斉藤たちが作った“男のカレー”を腹いっぱいになるまで食べた。





もちろん、“いただきます”“ごちそうさま”は忘れずに。