あふれるほどの愛を君に


だけど、それをそのまま言葉にはできなかった。

たかが噂話を気にしてる自分は相当格好悪く、黒木さんや鈴木さん………それからサクラさんには、器の小さい子供(ガキ)だと見られたらって──


「すみません。行きましょうか」


勢いよく立ち上がり財布を取り出す。

顔を伏せながらも、そんな僕をじっと鈴木さんが見ていることはわかっていた。

わかっていながら気づいてないふりを通し店を出た。



なんとなく、いつもより口数が少ないことを自覚しながら会社へ向かっていた。

隣を歩く鈴木さんも別の話題ばかり口にしていたけど、エレベータに乗り込んだ直後に思いだしたように振り返り、


「阿久津、俺は聞かれもしないことまで言うつもりはないよ。ただ花井には、あまり飲みすぎないように言っとけ」


苦笑いを浮かべ、そう言った。